この頃、頻繁にまんまる住宅Fさんの事務所を訪ねていました。上長谷の物件はハードルが高いから居抜き物件で検討するようにとアドバイスしてくれていたFさんですが、上長谷の土地の風致地区条例による壁面後退について電話で問い合わせてくれ、その必要性はなさそうということになりました。念のため徳島市の都市政策課に図面を持って確認に行くと、道路と敷地の間に法面が2m以上あるので壁面後退は不要とのこと。それなら、必要な広さの建物を建てることが可能になります。

先に書いたように、Fさんがあたってくれた周辺の物件と上長谷の土地を比べれば比べるほど、上長谷の土地への思いは逆に深まっていきました。またコストの面でも、居抜き物件は初期投資こそおさえられるものの、駐車場などの条件をクリアしようと思うとランニングコストが高くなり、10年程度継続できればトータルコストはさほど変わりません。地主さんからお話があった地代はほんとうにわずかなものでした。

経営不振等で営業を継続できなくなった場合に初期投資だけが残るリスクに対しては、地主さんが契約期間中の転貸を認めてくれるということである程度回収できます。また、開発許可などの許認可の費用を抑えるため、手続きは本人申請でおこない、図面だけ作成してくれないかとFさんを通じておつき合いのある行政書士さんにお願いしたところ、了解していただくこともできました。申請手続きには約半年かかりますが、その間はアルバイトしてつなげばなんとかなります。

上長谷の土地との「運命の出会い」以降、次々とハードルが出てくるたびに、「ほんとうにここでやる覚悟があるのか?」と試されている思いでした。当初は大きかった不安や迷いも行動し続ける中で徐々に整理され、決意が固まっていきました。また、まんまる住宅のFさん、地主のIさん、行政書士のKさんなど、応援してくださる方々との出会いも後押ししてくれました。2ヶ月近くの紆余曲折を経て、上長谷で開業することを決めました。