手打ちうどんでは「うどんにならない」ことはありませんでしたが、そば打ちでは「そばにならない」ことから始まりました。
木鉢での水回しの加水が多すぎ、延しの段階でそば生地どうしがくっついて破れる、逆に加水が少なすぎてそば生地が乾燥してひび割れる、ひどい場合は木鉢で練る段階で木鉢や手にくっついてまとめられなくなる、というような状態です。
参考にしていた本などでは、水回しの見極めについて「最後は手の感覚」などと書かれていますが、いったいどんな感覚ならOKなのかがわかりません。
しかし回数を重ねていくと徐々に要領を得ていくものです。そうなると今度は「上級者向けの粉」などと書かれている粉をネットで取り寄せては打ってみますが、当然そう簡単には打てません。
必ずうまくいくわけでもなく、かといってまったくできないわけでもない。その日のできばえがすぐ目で見てわかり、食べてみてわかる、というようなところから、そば打ちの魅力に引き込まれていきました。
休日ごとにそば打ちをしては家族に食べさせ、最初は喜んでいた子どもたちも、そのうち「ええっ、きょうもそば! スパゲティが食べたい」と悲鳴を上げていたものです。
そして、始めて数ヶ月のちには当時の勤務先のイベントで手打ちそばの実演販売をしていました。
いろんな事情もありそば打ちの頻度は減りはしたものの十数年の年月が流れました。しかし、自分で上達を感じ始めたのはそば屋になると決め、再び休みのたびに打つようになった2年前ぐらいからでした。
そして、2015年2月、本格的な準備のスタートとして、江戸東京そばの会プロコースを受講することになります。(続く)